病院・クリニックの介護支援補助制度について


いざ介護となった時のために

親の介護は、いつから必要になるかわからないものです。いざ介護をするとなった時、自身のキャリアや家庭においてさまざまな選択を迫られます。医師の場合、勤務先の状況や働き方によっては、親の介護のために退職したというケースも見受けられます。これから介護が必要になる可能性がある医師は、事前に自身の勤務先の介護支援補助制度について調べておきましょう。

法律で定められた、仕事と介護の両立のための制度

まず前提として知っておきたいのが、「介護休暇」や「介護休業」といった法的制度を取得する権利は、勤務先の業種や規模に関わらず、原則として要介護状態の「対象家族」を介護する労働者全員にあるということです。病院やクリニックの就業規則に介護制度がなかったとしても、介護休業、介護休暇、法定時間外労働・深夜業の制限の制度は、申出により利用することができます。(ただし、勤続年数が 1 年未満の方などで取得できないケースもあります)。

「対象家族」の範囲は、配偶者(事実婚の場合を含む)、父母(養父母を含む)、子供(養子を含む)、配偶者の父母、同居しかつ扶養している祖父母や兄弟姉妹や孫です。配偶者や父母、子供の場合は同居していなくても介護休暇や介護休業の対象となります。

介護休業を取得するためには、対象家族が要介護状態にあること等を明らかにし、介護休
業開始の2週間前までに書面等により事業主に申し出る必要があります。介護休業の場合、長期の休暇となるため、可能であればもっと早く申し出ることが望ましいでしょう。介護休暇の取得は緊急性が高いケースも多いため、当日の電話等による口頭の申出でもかまわないとされています。

病院・クリニックが独自に行う介護支援補助制度

短時間勤務や配置転換への配慮は、実は病院やクリニックの福利厚生としてではなく、前述の法的制度によって事業主に義務付けられています。対象家族の介護をする医師が、短時間勤務を望んだ場合、事業主は「短時間勤務制度」「フレックスタイム制度」「時差出勤制度」「介護サービスの費用の助成」のいずれかの措置を講じなければなりません。転職への配慮に関しても、「事業主は、就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合、その就業 場所の変更によって介護が困難になる労働者がいる時は、その労働者の介護の状況に配慮しなければならない」とされています。

法定時間外労働の制限についても、1ヶ月に 24 時間、1年に 150 時間を超える時間外労働が免除されるよう、介護休業法で定められています。深夜業制限についての法定もあり、午後10時から午前5時までの労働を免除してもらうよう申請できます。しかし、実際には制度を全く活用できないという職場も少なくありません。まずは、自身の職場がこれらの制度をきちんと取得できるのか確認しておく必要があります。

働きやすい職場作りに積極的に取り組んでいる病院・クリニックの場合、前述の法定義務を上回る内容の制度を整備している場合もあります。例えば、以下のようなものがあります。

・介護サービス利用料の補助制度
・育児や介護の休暇申請に関する専用相談窓口
・介護のために退職した医師の再雇用制度
・休業中から復職までの流れを円滑に進められるよう支援する制度

まだまだ数は多くないですが、こうした制度が整備されている病院やクリニックもあります。制度は、存在していることそのものに価値はなく、実際に運用されることで初めて意味があります。組織風土として就労環境についての意識を高めることが重要といえるでしょう。

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