子育てをしながら医療の第一線で働く女性医師は、自分の生活時間を削っていることが少なくないようです。子育てを理由に、キャリアを断念してしまう女性医師も多くいます。育児中の医師が職場にいる、ほかの医師もそれぞれに感じていることがあります。「働き方改革」が大きな社会的テーマとなっている今、医療機関においても育児支援は喫緊の課題です。今回は、育児中の医師とそうでない医師、それぞれが感じていることについて調べてみました。
育児中の女性医師は、「子供と過ごす時間が足りていない」「時短勤務・フレックス制度が足りていない」「職場の人に迷惑がかかり、申し訳ない」「キャリアプランを立てられず、毎日先が見えず不安」などと痛感していることが多いようです。配偶者の理解や協力があったり、近所に親が住んでいていざという時頼れる環境だったりする場合もあれば、周囲のサポートがなく無理をしすぎてしまう場合もあるようです。育休や産休が制度として広まっていても、現実的に子育て中の女性医師が働きやすい職場というのは、残念ながらそう多くはないようです。
男性医師の場合、仕事と育児を家庭内で役割分担し、育児はなるべく配偶者に任せるという選択を取っているケースが多いようです。しかし、医師国家試験合格者に占める女性割合も3割を超え、国全体を見ても働く女性が増えてきています。「ダイバーシティ」の観点からも、社会的影響力の大きい「医師」が進んで性別役割分担の意識を改革していくべきという声もあります。
とはいえ、一般企業では、男性の育児が休暇を取得できるよう体制の改善が進んでいる会社もありますが、医療機関ではまだまだ認識として定着していないことも多く、実際には「育児休暇の申請をしたら断られてしまった」という残念なこともあるようです。これからの世代では、「男性が働き、女性が家を守る」という意識を改革していく必要があるといえるでしょう。
一方で、育児中の医師が休んだ場合には、育児中でない医師に負担がかかってしまうという問題も起きているようです。「当直・オンコールの業務が増えて、大変なのはわかっているのだけど、正直こちらもしんどい…」「子供が熱を出したなどの理由で急に一人休まれると、その分の業務負担がかかってくる」「理解や思いやり不足というよりも。とにかく人員不足」「たくさん働く人は給与を増やす、当直対応をしている独身医師は昼間の業務を減らすなどしてくれないと不平等を感じる」などという意見があるようです。
育児に対する周囲の意識や理解はあったとしても、現状が回らないのであればどうしようもありません。性別に関係なく、また育児する医師もそうでない医師も平等に働き、平等にキャリアを形成していくには、保育や勤務先の体制整備など現実的に効果があるサポートが必要になっています。