なぜ新専門医制度?既存制度との違いと課題


専門医制度とは

専門医制度とは、専門医の質の向上を目指す教育制度のことです。医師としての専門性やスキルの証明にもなっています。2018年から、既存の専門医制度とは別に、「新専門医制度」が全面的にスタートしました。専門医の質や地域医療など、さまざまな側面に影響が出るとして医療関係者の間で高い関心を集めているトピックスです。

なぜ新専門医制度?

今までの専門医制度は、各領域の学会がそれぞれ独自の評価・認定の仕組みを設けて運用されていました。 しかし、専門医制度を運用する各学会の専門医認定基準が統一されておらず、制度間によってのばらつきが大きいという問題が生じていました。また、「患者から見て専門医の指標がわかりにくい」「専門研修の仕組みを標準化できていない」などの指摘もあったようです。

特に2002年より開業医は専門医資格を広告に掲載してよいこととなり、専門医の種類が一気に増え、専門医の質をどう担保していくかという課題がありました。

こうした背景から、2011年より専門医の在り方について協議され続けていました。そして、医師の質の向上を目的に、さらには医師の偏在という課題とも向き合いながら仕組みを見直そうということで、新しい専門医制度の導入が決定されることになりました。

既存の専門医制度との違い

新専門医制度は「専門医の質を高め、良質な医療が提供されること」を目的としています。それぞれの学会で独自運用されていた認定プログラムが、中立的な第三者機関である「日本専門医機構」で運用されることになったという点が既存の制度との大きな違いです。これによって専門医資格の認定基準の統一を図っています。

また、新専門医制度は19の基本領域の診療科と29のサブスペシャリティ領域の診療科で構成されます。

19の基本領域
総合内科・外科・耳鼻咽喉科・麻酔科・形成外科・小児科・整形外科・泌尿器科・病理・リハビリテーション科・皮膚科・産婦人科・脳神経外科・臨床検査・精神科・眼科・放射線科・救急科・総合診療科

29のサブスペシャリティ領域
消化器・腎臓・消化器外科・小児神経・放射線治療・循環器・肝臓・呼吸器外科・小児血液・放射線診断・呼吸器・アレルギー・心臓血管外科・がん・手外科・血液・感染症・小児外科・周産期・脊椎脊髄外科・内分泌代謝・老年病・リウマチ・婦人科腫瘍・集中治療・糖尿病・神経内科・小児循環器・生殖医療
サブスペシャリティ領域の専門医は基本領域に比べて専門性が高いため、基本領域の段階で、希望するサブスペシャリティ領域に関係あるものを取得しておく必要があります。

新専門医制度の課題

新専門医制度に対する批判の声は少なくありません。問題として研修プログラムを実施できる施設が大学病院や都市部の大きな病院に限定されているということがあります。

専門医を取得できるのが大学病院中心となると、現場で鍛えてきた若手医師が大学に戻らざるを得なくなります。そうなると、大学病院の力が強くなりすぎてしまうのではないかという懸念があるようです。

もう一つ、都市部に医師が集中することで地方に医師が不足しているという問題が助長されるのではないかということも課題となっています。これについては地域医療に配慮した基準の見直しなども行われましたが、そうなると今度は本来の目的から外れてしまっているのではないかという意見もあり、一筋縄ではいかない問題となっています。新制度では、総合診療専門医は、都市部から離島などへ1年間勤務することが義務づけられたりと、制度によって医師のキャリアが左右されています。

新専門医制度が及ぼす影響

専門家などは、制度によって大きく改善される点もあれば、医師のキャリア形成や社会全体にマイナスの影響が出てくる危険もあるとの見方をしているようです。自分のスキルを向上するためには、制度に振り回されることなく、自身でキャリア形成を戦略的に考えて動いていかなければならないと言えるかもしれません。

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