「産業医」という職業は知っていても、実際に産業医がどのような業務を行っているかについては詳しくご存知でない方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、嘱託産業医と専属産業医の働き方の違いや、専属産業医の年収、業務内容などについてご説明します。
嘱託産業医と専属産業医は雇用形態と働き方が異なります。嘱託産業医の場合は、週1~2回という契約で働くことが可能なため、セカンドキャリアとして選ぶ医師も多いです。年収については、週2回勤務で年収300万円程度というようなケースが多いですが、数十件の企業を担当して月収300万になるような嘱託産業医もいるそうです。専属産業医は、大企業の場合、年収が1000万円〜2000万になります。その企業の勤務形態や就業規則に則って仕事を行うため、勤務医のように、深夜残業や当直などはありません。一般的には、嘱託産業医での経験を経て、専属産業医になるといったケースが多いと思います。
従業員数が多い大手企業では、従業員の健康管理等の業務も多くなるため、専属産業医を選任する必要が出てきます。労働安全衛生法では、専属産業医を選任する数を以下のように義務づけています。
・常時 1,000 人以上の従業員を使用する事業場 1名以上
・3001人以上の従業員がいる企業 2名以上
これに加え、有害業務に常時 500 人以上の従業員を従事させる事業場も専属産業医が1名以上必要となります。専属産業医の求人は東京、大阪、名古屋など都市部に多いですが、総数として少なくキャリアも必要となるため、狭き門といえるでしょう。
嘱託産業医も専属産業医も、業務範囲は基本的に同じです。主治医が「診察」や「治療」を行うの対して、産業医は「指導」や「助言」を行います。実は診療や管理なども兼任する事例もあり、そうした働き方は「兼務産業医」と呼ばれています。企業の代表取締役、医療法人の理事長、病院の院長などが産業医を兼任しているといったケースです。しかし、これでは産業医が事業主側の利益を優先する立場になってしまう可能性があり、労働者の健康管理が行き届かないという問題が生じるため、厚生労働省は改善を求めています。産業医は、企業側と従業員との間で、医学的な観点、中立的な立場から、指導や助言を行うことが仕事です。最近では特に、職場のメンタルヘルスケアが重要視されており、このことから産業医のニーズが高まっています。専属産業医の場合は、企業が診療機関や精神科医との連携も重要な仕事になります。
以上、嘱託産業医と専属産業医の違いや、専属産業医の働き方、業務内容についてご説明しました。産業医は、従業員の心身の健康を守るというやりがいのある仕事です。専属産業医の求人は一般公開されていることが少ないため、関心がある方はエージェントなどを利用してみると良いと思います。