海外留学や海外勤務の予定がある日本人医師や、将来海外で研究をしてみたいと考えている日本人医師にとってネックになるのが、言語の壁です。今回の記事では、海外留学したい医師が持っておくべき英語力はどのくらいなのか、また効率が良い勉強方法についてもご紹介します。
どの程度の英語能力が必要になるかは、海外留学の目的によって異なります。例えば、日本学術振興会の場合、海外特別研究員の募集要項では、「海外で研究活動を行うにあたり、相応の語学能力(英語であれば、 TOEFL(Internet-based)79点、TOEIC730点、英検準1級のいずれか程度)を有することが望ましい」としています。
日本人のTOEFL平均スコアはおよそ70点程度と言われているので、TOEFL79点は比較的ハードルが低いと言えますが、他の研究者とのコミュニケーションが取れるレベルなので問題ないという判断だそうです。名門校で学びたいなどの理由で海外を目指す場合は、もっと高度な英語力が必要になります。マサチューセッツ工科大学は、最低スコアが90点です。TOEFLでは110点がだいたいTOEICの満点ぐらいのレベルと言われているので、かなり高いレベルが必要であることがわかります。
能力が高い医師であっても、やはり「聞くだけ勉強法」や「読むだけ勉強法」で英語力が身に付くということは少ないようです。語学は、地道な努力を要します。英語を話せるようになるためには、日々トレーニングが必要です。日本人が特に苦手とする英語スピーキングについては、「質より量」といえるでしょう。外国人との英語でのコミュニケーションを積極的に取る、英会話教室に通うなど、とにかく実際に英語を話す機会の回数を増やしましょう。研究や臨床で使われる表現はそんなに多くはないと思うので、まずは医療業界でよく使う言葉だけでも覚えると良いでしょう。すでにある程度の会話できる力がある場合は、語学留学もかねてというかたちで、思い切って海外に行ってから現地で勉強するというのも一つの手です。
リーディングやライティングについては、医師の場合、大学受験などである程度習得できているケースが多いかと思います。「しばらく英語から離れていて全くわからない」という状況であれば相当時間がかかってしまいますが、ある程度読み書きできる場合は英語で書かれた論文などを読み、要点をまとめた英作文を作成してみるなどすると良いでしょう。
最後にリスニングについてです。海外留学を目指す医師のための英語勉強法としてというよりは、医師の英語勉強に限らず全般的な傾向としてありがちな失敗が、「ながら勉強」です。日常的にラジオで英会話を聞き流したり、移動中に洋楽を聴いたりすることも効果的ですが、それだけでリスニングが上達するといういうケースはあまり耳にしません。忙しい中でのリスニングでも、ながら勉強はなるべく避け、集中して行う方が得策でしょう。「それなりに英語で話せるけど、早口で話されると聞き取れない」という人は、聞こえてくる音声を追って声を出す練習法「シャドーイング」を実践すると良いでしょう。「単語が聞き取れない」「そもそも英語の音に慣れていない」という場合、短い文を正確に聞き取りながら書き取る「スピーキング」と同時に学習できる部分もあります。
海外留学の目的によって、必要な英語力のレベルは異なります。英語力もあればあるほど良いのはもちろんですが、他の勉強・研究や勤務などで忙しい医師の場合、語学に使える勉強時間が限られるケースも少なくないと思います。まずは自身の英語レベルを把握し、海外留学の目的から推測される今後必要になりそうな英語レベルを調べます。そのレベルのギャップを埋めるにはどの程度の勉強が必要かを検討し、計画と目標を立てて効率的に勉強すると良いでしょう。