うつ病で休職する従業員への対応方法とは?手当や対策まで解説

長時間労働や対人関係など職場の環境によりストレスを感じる従業員がいます。なかにはうつ病になるケースもあり、企業としても対応に追われる場合があるでしょう。本記事では、うつ病で休職する従業員への対応を中心に解説します。

また、うつ病による休職への対策も取り上げました。職場環境の改善などに活かしてください。

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うつ病で休職する従業員への対応方法

うつ病で休職する従業員への対応方法

うつ病で休職する従業員への手続きや対応は、大きく分けて3つになります。以下の手順を踏んで対応することで、滞りなく進めることが可能です。

医師の診断書を提出してもらう

うつ病を理由として従業員から休職の申し出があったときは、医師の診断書を提出してもらいます。診断書をもらう理由としては、うつ病などの精神疾患は見た目だけで就業不可能であるかどうかの判断が難しいからです。

また、基本的に医師の診断書は従業員や企業側から記載内容を指示することができないものの、診断書が必要な理由を医師に告げれば必要と思われる内容を記載してもらえるでしょう。

企業側としては、病名、就業ができない理由、就業ができないと判断する期間の記載があるかどうかを確認してください。

従業員と休職の際の対応

医師の診断書などをもとにして、従業員と休職前の擦り合わせも必要です。企業側は従業員に、「休職期間」「手当や給与」「社会保険料」「給付金」「休職中の連絡手段」に関して確認していきましょう。

休職期間については、診断書を目安として就業規則をもとに最長の休職期間を説明します。手当や給料などに関しては後述しますので、次章以降を参考にしてください。休職中の連絡手段は、連絡をやり取りする窓口、連絡の頻度、方法(電話やメールなど)、連絡(報告)内容を双方で決めます。

ただし、連絡のやり取りに関しては、休職する従業員の負担にならないようにメールか書面で行いましょう。

それから、休業する従業員が担当している業務の引き継ぎも必要です。社内の人材でリソースが確保できないときは、派遣社員など一時的に人材を採用しましょう。社内の人材に業務を割り振るのであれば、しっかりと共有することが大事です。

人事担当や上司が勝手に業務を割り振ると、社内でトラブルになる可能性があるからです。

休職中の対応

従業員が休職期間に入ったら頻繁な連絡のやり取りをせず、適度な距離感を保ちましょう。とはいえ、放置していては従業員の状態が分かりませんので、先に決定した連絡方法で定期的なやり取りを行ってください。

定期的な連絡を入れることで休職している従業員は「会社に支援されている」と、安心感が生まれるものです。手当や手続き関係の連絡であっても、収入面での不安を取り除くことができるでしょう。

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うつ病で休職する従業員への手当や給料

休職する従業員だけではなく、企業側としても手当がどうなるのか給料をどうすべきかは気になるところでしょう。以下で、うつ病で休職する従業員への手当や給料についてご説明します。

基本的に企業側は支払う必要がない

基本的に休職に関しては就業規則で定めるわけですが、休職理由や種類、企業風土などにより多少の差があっても、ほとんどのケースで「休職期間は無給」と定めています。うつ病は「私疾病休職」とされ従業員の私的な理由による休職です。

そのため、プライベートな理由での休職について企業側が給料や手当を支払う必要がないのです。あくまでも企業側の判断に任せられています。

ただし、休職期間を有給休暇扱いにすることや、休職していても在籍していればボーナスが支給されるなど、あらかじめ就業規則で定めてあれば支払う必要があります。

注意点として、社会保険料は給料の支払い有無にかかわらず、支払いが生じることです。その場合は企業側が立て替えるのか、従業員に支払ってもらうのか事前に決める必要があります。

うつ病で休職する従業員に案内したい給付金

いくら私的な理由とはいえ、休業期間中に収入が途絶えると従業員は不安になります。そこで、あらかじめ案内しておきたい給付金があります。

それは「傷病手当金」です。傷病手当金は休業中に給料が支払われない場合に健康保険組合などから支給される給付金です。4日以上連続で働けない場合に申請対象となるため、中長期的な休職であれば申請できます。

参考:全国健康保険協会 傷病手当金

なお、傷病手当金の申請は休職する従業員が自ら行う必要があります。申請が通ると最長で1年6ヶ月間、手当が支給される制度です。

そのほか、下記にあげた給付金や支援が受けられる場合もあります。

  • 自立支援医療制度
  • 障害年金
  • 労災保険
  • 失業手当
  • 生活困窮者自立支援制度
  • 生活保護制度

個人の状況によって受けられる給付金や支援の程度は異なります。
従業員の不安を取り除くためにも、適宜積極的に案内してみてください。

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復職まで従業員に確認しておきたいこと

休職期間を経て従業員が職場復帰するまでに確認しておきたいことがあります。以下の5点を確認しておくことで、従業員がスムーズに職場復帰できます。面談で確認したい点をみていきます。

復職まで従業員に確認しておきたいこと

症状の回復具合の見極め

従業員が復職の申し出をした場合は、医師や産業医などとの面談を行って復職の可否を判断していきます。休職時と同様で診断書を参考にしながら判断します。復職が可能であるかの目安としては、診断書に復職可能と記載があるかどうかです。

また、精神的な安定が最低でも2週間続いているかも目安にしてみてください。他にも、体調の悪化を理解しているか、予防策を決めているか、体調悪化の場合の対応を決めているかなども復職の目安になります。

就業の意欲

具体的な病状の把握が済んだら、就業意欲の確認をしてください。就業の意欲は従業員本人から「働きたい」と口にしているかがポイントです。「少しは働いてみたい」という程度では、うつ病の再発になりかねません。

体調や精神状態が万全で以前のように働きたいという意欲が重要なのです。面談の際は高圧的に確認するのではなく、「休んでみてどうだった?」「いろいろと辛かっただろう」「働きたい気持ちは出てきたか?」など従業員に寄り添って質問を投げかけましょう。

体力の回復

就業に向けての体力が回復しているかも確認したいところです。オフィスなどに出社する場合であれば、多少なりとも多力が戻っていないと働く以前の問題でしょう。テレワークなどでオンラインがメインの仕事であっても、まとまった労働時間であり体力が必要です。

休職期間中の生活リズムをチェックして、特に睡眠時間が取れているかを重点的に判断しましょう。仮に睡眠時間が短い日が続くのであれば、休職の延長が必要と言えます。

業務・職場への適応能力

うつ病で休職する原因には、それまでの職場環境に適応できないケースが考えられます。復職後も以前と変わらない職場であれば、うつ病が再発することもあるでしょう。職場の環境が変わらなければ、いくら休職をしても効果が薄いわけです。

そこで、人事担当などが適した部署に配置したり職場環境を改善したりすることが必要となります。特に産業医の意見も取り入れつつ、復職後に適する環境を提供してください。

ただし、配慮しすぎると本人は「頑張らなければならない」と感じやすく、オーバーペースで働く可能性があります。結果として心身の疲弊につながり、再び仕事を休む可能性があるのです。

声がけをしたり業務の進捗を確認したりして、適正な量の仕事ができるようにしていきましょう。

通勤の可否

物理的な通勤が伴う場合は、それ自体が可能かどうか確認する必要があります。うつ病の場合は人混みや人と話すことが苦手である症状があります。休職前は大丈夫であっても復職後に問題ないとは言いきれません。

そこで、復職の際も通勤ができるかどうかの確認が必要なのです。場合によってはテレワークや時差出勤、短時間勤務などで対応する必要があるでしょう。

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従業員がうつ病で休職しないための対策

うつ病で休職することは本人も企業側もさまざまな面で負担が大きいです。そのため、従業員がうつ病で休職しない環境づくりや対策が必要です。重要なことは従業員、管理職、産業医(場合により事業所外の専門家)が協力して対策をすることです。

従業員がうつ病で休職しないための対策

従業員が自分のストレスに気づいてセルフケアができること、さらに管理職が従業員の相談に乗れる体制づくりや職場環境の把握・改善が必要となります。また、メンタルヘルスケアの計画・立案や職場復帰への支援には産業医が欠かせません。精度を上げるには事業所以外の機関や専門家の協力も必要でしょう。

企業側としては、管理職による従業員の日常的な観察やヒアリングが求められます。そして、職場環境改善のための組織づくりとして産業医や人事・労務担当の手腕が必要です。職場改善計画の立案ができたら、ストレス要因をリストアップしてみてください。

計画を実施し始めたら適宜、進捗の確認、現状の把握から対策内容の改善をし続けます。このように、従業員にとってストレスとなりうる要因を洗い出して対策を検討することがポイントです。

参考:産業医によるメンタル休職からの職場復帰支援とは?

産業医との連携で休職を防ぐ

働く人は何かしらでストレスを感じて、場合によりうつ病を発症する可能性があります。休職するケースもあり、企業としては対応が求められます。従業員、企業の双方にとって休職はできるだけ避けたいところです。

本記事では、うつ病で休職する従業員への対応や復職、対策などをご説明しました。未然に休業を防ぐためにも産業医と連携して、日頃から対策を進めることを意識してみましょう。

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