健康管理室の役割とは?メンバー構成や仕事内容を紹介

「健康管理室」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?

ソニー、日立、トヨタ自動車、NEC、富士通等の大企業には、営業部、企画部、人事部と同じように、健康管理室という産業保健スタッフが在籍する部門があります。

産業保健スタッフは、産業医、産業保健師、企画職、事務職で構成され、従業員のフィジカルやメンタルの健康を守る仕事を行なっています。

なかなか、耳にされたことがないかもしれませんが、先に記載した企業以外にも設置され始めております。これは、新型コロナウイルスの影響から、従業員のフィジカル、メンタルを企業がケアすることに対し、経済的な便益があることの確固たる理由になります。

一方、1000人に満たない企業では、産業医の先生は契約されている企業がほとんどではないかと見受けられますが、健康管理室のような「部」や「室」単位になっている企業はほとんどありません。

今回のコラムでは、健康管理室がなぜ、必要なのか?

どういうケースだと必要で、どういうケースでは必要ないのか?

また、まだ知れ渡っていない健康管理室ですが、現状、健康管理室が抱える運用面での課題等も共有いたします。

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健康管理室とは?

健康管理室とは?
従業員のフィジカルやメンタルの健康を守る仕事を行なう組織のことです。
プロジェクトチームのメンバーには産業医、保健師等の産業保健スタッフのほか、会社の経営数値目標がわかるメンバーも必要です。
医療職の産業保健スタッフのみのメンバーになると、どうしても経営とのバランスが取りづらくなるため、経営、人事との通訳できるメンバーの参画は必須でしょう。

医療職以外の役割

健康管理室というと、産業医、保健師が中心となるメンバーであることは、もちろんですが、重要な役割を担うのが、医療職以外の方々です。

事務スタッフはいるケースが多いですが、健康管理室がワークし、従業員の信頼を得ている健康管理室は、企画職の人材がアサインされているケースです。企画職の方々が、医療職との間に入り、その他の部署や経営陣と円滑なコミュニケーションを果たしています。

なぜ、健康管理室が必要か?

健康管理室は何のために必要なのでしょう。

「従業員の健康を守るため」と多くの産業保健スタッフの関係者は言うのではないでしょうか。

これは、もちろん間違いではありませんが、これだけでは企業、もっというと経営陣は動かないのではないでしょうか。

中には純粋に福利厚生の一環から存在するケースもありますが、「従業員の健康を守るため」だけで、産業医、産業保健師、企画職、事務職、その他健康関連システム等の費用を使う意思決定できる企業は多くはありません。

当社は「●●のため*」に健康管理室を立ち上げ、運用することを強く推奨しています。

「●●のため」という位置付けを理解すると、如何に重要な組織であるかがわかり、経営陣の意思決定のときの判断軸にもなるでしょう。

2021年現在、テレワーク対応、新型コロナウイルス対応の問題にぶつかっている企業は多数あります。

今までになかった環境変化が発生し、不調気味の従業員も少なくないでしょう。
これらの問題解決を行う部門が健康管理室なのです。

健康管理室のメンバー構成

成功する健康管理室には、産業医、産業保健師等の医療職のほか、医療職とそのほかの部門を橋渡しする企画職に相当する方と補佐する事務職の4職種で構成されています。

よくある健康管理室の問題として、医療職とそのほかの部門を橋渡しする企画職に相当する方がいない場合、つまり医療職のみで構成されている場合、業務のブラックボックス化や他の部署(特に人事部門)との連携に問題が生じるケースが少なくありません。

健康管理室の業務内容

健康管理室の業務内容
「健康管理室の仕事」=「産業医の仕事」と捉えて、構いません。
産業医の仕事は、労働安全衛生法規則第14条1項に下記の通りに定められています。

  1. 一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  2. 二 医師による面接指導(66条8第1項)、労働者の労働時間の把握(66条8の2第1項)及び長時間労働(66条の8の4第1項)に規定する面接指導並びに法第66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  3. 三 心理的な負担の程度を把握するための検査の実施(ストレスチェック)並びに高ストレス者への面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
  4. 四 作業環境の維持管理に関すること。
  5. 五 作業の管理に関すること。
  6. 六 労働者の健康管理に関すること。
  7. 七 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
  8. 八 衛生教育に関すること。
  9. 九 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

上記9つを、噛み砕いて、「健康管理室6つの基礎的な業務内容と役割」として、ご説明します。

健康診断の結果チェックと就業判定

産業医は労働者の健康診断結果をチェックしながら、適切な判断をしていき、必要に応じ面談を通じて指導・助言をすることが求められます(労働安全衛生法66条4項)。

業務上のゴールとしては、「定期健康診断結果報告書」を労働基準監督署に提出することになります。

診断結果の中には、初見有りといった結果もあり、診断結果によりましては今後の就労制限や就業の可否判定が求められるケースも多いでしょう。

ここで産業医に求められることが、適切な判定をすることです。

これ以上の労働が困難な労働者に対し、何も助言をしなければ更なる健康被害が懸念されるため、適切な就労制限や就業判定が必要です。

就労判定は通常、下記のように企業の働く環境毎にリスクを定義します。単純に産業医が「確認する」だけではなく、どのように保健指導等の事後措置をとるかが求められ始めています。

なお、最後の判断は産業医が重要な役割を担いますが、大量の健康診断のデータを扱うため、スクリーニンングや保健指導、各部署との連携について、産業保健師がその役割を担うこととなります。

特に健康診断システムを導入している場合、データがしっかり入力されているのか?がポイントとなるため、産業保健師や事務職との住み分けを行いながら、対応してくことが求められています。

健康診断の結果チェックと就業判定

特に新型コロナウイルスの影響により、健康診断の結果による安全配慮の義務の範囲が拡大しています。基礎疾患のある労働者にとって、命に関わる問題になることから、適切な把握及び対策を講じる必要性が企業に求められています。

2020年12月15日現在、日本産業衛生学会及び日本渡航学会発行の「職域のための 新型コロナウイルス感染症対策ガイド」によると、下記が重症化のリスク要因として挙げられているため、企業と産業医は、安全配慮義務から、就業判定と事後措置の適切な運用が必須の時代となりました。

新型コロナウイルス感染症重症化のリスク要因

なお、「定期健康診断結果報告書」を労働基準監督署に提出するに際して、産業医の確認が必要です。

2020年年7月までは「産業医の押印」が必須でしたが、新型コロナウイルスの影響や昨今のDX推進への移行から、産業医の押印は不要となりました。

しかし、これらはDX化推進が背景にありますから、電子による産業医の確認等は記録として残すことがよいでしょう。

ストレスチェック制度に基づく高ストレス者の面接・指導

2015年12月に導入されたストレスチェック制度は、労働者のストレスレベルを把握し、労働者がメンタルヘルス不調に陥ることを予防するためのです。

調査票を用いてストレスレベルを点数化し、高ストレス者を選定、医師による面接指導の要否を判断します。

ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、1年以内ごとに1回の実施義務があります。

厚生労働省(平成29年7月発表)によると、ストレスチェックの受験状況は、約8割が受けています。自社の状況がどうなのかという視点として、ひとつの目安とするとよいでしょう。

ストレスチェックの受検状況

事業場規模ストレスチェックを受けた労働者の割合
50〜99人77.0%
100〜299人78.3%
300〜999人79.1%
1000人以上77.1%
78.0%

高ストレス者と判断されるのは、企業にもよりますが、10%前後となるケースが多いようです。
高ストレス者が15%以上いる企業は、従業員に負荷がかかっている可能性があるため、何らかの対策を練るとよいでしょう。

また、高ストレスと判断された従業員のうち、実際に産業医面談を希望する者は、0.6%と非常に少ない割合となっています。高ストレスと判断されても、従業員からすると、「産業医との面談」は、まだまだハードルが低くなく、ここを、どう早期にフォローできるかが、企業のメンタルヘルス予防体制として重要なポイントとなります。

医師による面接指導を受けた労働者の状況

事業場規模医師による面接指導を受けた労働者の状況
50〜99人0.8%
100〜299人0.7%
300〜999人0.6%
1000人以上0.5%
0.6%

※ 事業者はストレスチェックの結果、高ストレス者として選定された者であって、医師による面接指導を受ける必要があるとストレスチェック実施者が認めた者のうち、労働者から申出があった者について、医師による面接指導を実施しなければならない。

なお、義務ではないですが、ストレスチェックの「集団分析」の実施状況は下記の通りです。
多くの事業場が集団分析を実施していますが、これをどう活用して、企業のメンタルヘルス予防体制を構築できるかが、今後のポイントとなっているでしょう。

集団分析の実施状況

事業場規模集団分析を実施した事業場の割合
50〜99人76.2%
100〜299人79.7%
300〜999人83.6%
1000人以上84.8%
78.3%

※ 集団分析とは、ストレスチェックの結果を職場や部署単位で集計・分析し、職場ごとのストレスの状況を把握すること。集団分析の結果を、業務内容や労働時間など他の情報と合わせて評価し、職場環境改善に取り組むことが事業者の努力義務となっている。

休業者に対する復職の可否の意見

メンタルヘルス不調により休業していた労働者の復職に関する診断も、大切な役割です。
そのためには医療機関(主治医)との情報交換が非常に重要ですが、場合によっては医療機関(主治医)の判断と反対の意見を述べることもあります。

その理由が、厚労省・中央労働災害防止協会が制作した冊子に明記されています。

“主治医による診断は、日常生活における症状の回復程度によって職場復帰の可能性を反していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らない。このため主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見をのべることが重要です。”
参照:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf

同様に、「今すぐ復職したい」と申し出る労働者に対しても、アセスメントの結果次第では反する意見を述べるのが産業医の役割です。

産業医は、あくまで「意見を述べる」ことに留まるのですが、その意見書をもとに企業が労働者の復職を判断する必要があります。

産業医は、企業に寄り過ぎても、労働者に寄り過ぎても問題となるため、「合理的な判断ができる産業医」のアサインが最も重要です。

「合理的は判断」については、「休職復職の仕組化と運用」を参照してください。

就業上の配慮に関する意見

メンタルヘルス不調者が働く上での配慮について、管理監督者や人事労務管理スタッフらに対して、意見を述べる役割もあります。

適切な意見を述べるためには、社内の関係部署との調整・連携が不可欠です。
さらに、職場巡視やストレスチェック結果の基に職場環境の改善提案も行うことで、相乗的に労働者の健康を守ることにつながります。

長時間労働者への面接指導

時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合、産業医は「長時間労働者面接指導」を行います。また、3ヶ月連続80時間超の時間外労働、もしくは1ヶ月あたり100時間を超える時間外労働を行った労働者に対しては、申し出関係なく面接指導を行います。

産業医が面接指導を通じ、心身の状態、勤務状況を確認します。

面談時には健康診断の結果、ストレスチェックの結果等を活用し、産業医が労働者の健康に関するリスクを勘案し、必要に応じて、企業に対し、適切な措置を指示することがあります。

たとえば、収縮期血圧160以上、拡張期血圧95以上で特段何の措置もせずに働かせている労働者が役務中に脳卒中や急性心筋梗塞を発症した場合、企業の安全配慮義務が厳しく問われる可能性があります。

衛生委員会への参加

労働者が50名超となった事業場では、衛生委員会を開催しなければなりません(労働安全衛生法18条)。

事業者は、制令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し、意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
衛生委員会のメンバーは会社側と労働者側で構成されています。

衛生委員会への参加

産業医の衛生委員会への参加ですが、衛生委員会への参加も産業医の大切な役割の1つとなります。

衛生委員会は概ね、月に1度30分から1時間程度、行われているケースが多いです。

特に2019年4月より産業医の権限が強化されたことにより、産業医はこれまで以上に衛生委員会で積極的に意見を出すことが求められました。

所謂、働き方改革施行後、テーマとしては、36協定の遵守状況を含む労働者の勤怠の状況が毎月行われる会社が増えています。
加えて、新型コロナウイルスの影響があった2020年からは、感染症予防に関するテーマが増えています。

2021年現在、産業医からテーマを求められるケースが増えており、衛生委員会に対し、受け身の産業医ではなく、積極的な産業医を求める企業が増えています。

最低2ヶ月1回の職場巡視

職場巡視は、労働安全衛生規則第15条で次のように定められています。
*2018年に毎月実施から2ヶ月1回へと変更となりました。

産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

産業医は、職場の安全配慮の観点から、作業環境管理、作業管理、健康管理の観点から、適切な指導を行う必要があります。

最低2ヶ月1回の職場巡視

【オフィス環境】

  • 感染症予防の観点から、1m以上の距離(可能であれば2m)のソーシャルディスタンスが配慮されているか
  • 感染症予防の観点から、マスクのほか、透明のプラスチック等で飛沫感染を防ぐ仕様となっているか
  • 感染症予防の観点から、定期的な換気、空調となっているか
  • 温度湿度調整
  • コンセント等の電気用具管理
  • 衛生面から備品管理、ゴミの分別、トイレ、給油室、冷蔵庫等

【防災・安全】

  • 非常口、非常経路
  • 消化器
  • キャビネット等の設置状況
  • 空有級用具、防災備品

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健康管理室で利用するシステム

健康管理室で利用するシステム

健康管理室が考慮すべきシステムは通常、以下のものが考えられます。

① 健康診断データの情報を格納するシステム

健康診断データは事業主が管理すべきデータであり、労働安全衛生法で5年間の管理義務があります。

勘違いされている方も少なくないのですが、そもそも健康診断とは、「今年も来年も健康に正常稼働できる健康状態であるか?」という事業主のチェック機能なのです。

事業主には労働者に対する安全配慮義務がありますが、一方、労働者には事業主に対して、「自己保健義務」を負っており、健康である義務があります。
そのうえで、正常稼働できることを前提とし、給与に対する手厚い補償がなされているのです。

この考え方をベースにすれば、健康診断を行い、労働者の健康状態を管理することが如何に重要であるかがわかっていただけるのではないでしょうか。

健康診断データ管理システムは、イーウェル、NTT、バリューHR、インテージ、ウェルネスコミュニケーション、iCareが提供しております。初期導入手数料に加え、1ユーザーあたり、概ね5000円/年が相場になります。そのほか、健康診断の予約代行等を含めると、なかなかの費用感になってきます。

各社ともどもカスタマイズにも応じてもらえますが、導入の際には、業務の見直しも行い、システムに合わせた形に業務フローを変更しないと、さらに運用コストも重なる傾向があります。

この辺りの導入や運用に関して、企画職の人材が入る必要があります。医療職は業務改善や生産性を上げていくスペシャリストではありませんで、導入の際、経営サイドと費用間で合わないケースも少なくありません。

何のために導入するのか?運用を最小工数、最小人数で合理的に行うには?医療職の本来力を発揮すべき箇所で発揮してもらうにはどのような構成がよいのか?等、全体を再度、要件定義していく必要があります。

② ストレスチェックシステム

2015年12月より施行された通称「ストレスチェック」。ストレスチェックを提供している企業は多数存在し、産業医クラウドで把握しているだけでも40以上あります。

相場が初期手数料5万円〜、クラウドサービスですと1回300円/人、紙ですと500円+郵送費用等/人 が相場になり、あまり大きな違いはありません。

そもそも、厚生労働省から、「こころの耳」という無料ツールも提供されていますので、初めて、ストレスチェック を行う事業主は、厚生労働省のツールでも実現できます。しかしながら、多くのソフトウェアベンダーが提供している背景には、提供しているツールに便利機能があるためです。

ここでは産業医クラウドがおすすめするストレスチェックを比較し、ご紹介いたします。あくまで形式基準を整えたい企業は、メンタルヘルステクノロジーズかHRデータラボがオススメです。付随する便利機能が欲しい企業は、ラフール、アドバンテッジリスクマネジメントがおすすめです。

③ パワーハラスメントの相談窓口システム

パワーハラスメントの相談窓口について、大企業では2020年6月1日より義務化となり、中小企業では2022年4月1日より義務化となります。

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行に伴い、ハラスメント防止対策が強化されています。
その一つが、ハラスメント相談窓口設置の義務化になります。

2016年度に厚生労働省が行なった「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、従業員向けの相談窓口で最も相談の多い悩みはパワハラで実に32.4%を占めています。

裁判に発展するケースも増えており、基本的には外部に相談窓口を依頼するほうが客観性をもって判断されるため、外部サービスをご利用していただくことがお勧めです。外部の相談担当者としては、産業カウンセラー、弁護士・社会保健労務士事務所、ハラスメント専門コンサルティング会社などが適任でしょう。当社の連結会社メンタルヘルステクノロジーズではELPISハラスメントホットラインというサービスがありますので、気になった方はお問い合わせください。

脱線しましたが、この手の事項も産業保健スタッフの見解を取り入れたり、外部相談窓口の有効性を検証するためにも健康管理室にて選定するほうが、効果的です。

④ 外部相談窓口システム

4つのケアのうち、外部相談窓口の有効性を立証することは最も難しいです。

一方で、企業が用意した、産業医や保健師に相談しづらいという従業員は、実はかなり多く占めております。

外部相談窓口の一般的な相場は100人の従業員で50,000円/月〜100,000円/月になります。
1000人の従業員ですと、40万円/月〜となるケースも少なくありません。

当社の連結会社メンタルヘルステクノロジーズではELPISケアーズライトというサービスがあります。こちらは5000円/月〜と安価です。1000人の従業員でも月額50,000円程度と安価となっています。気になった方はお問い合わせください。

健康管理室で主導すると効果的な研修

新型コロナウイルス以降、環境変化やテレワークの推進により、従業員の「メンタルヘルス予防」の対応を考える企業が少なくありません。

メンタルヘルス予防の典型的な研修は、セルフケア研修、ラインケア研修、ハラスメント対策研修です。

これら研修を実施している企業は少なくないけど、イマイチ効果がわからないという企業も少なくはないのではないでしょうか?

実は、これら研修の実行にはコツがあります。ほとんどの企業が外部講師にセルフケア研修、ラインケア研修、ハラスメント対策研修を依頼しているのですが、これが上手くワークしない要因です。講師は、健康管理室の産業医や保健師が実行すると、効果的でしょう。

知らない講師に聞くより、普段から企業がアサインしている「専門家」が、研修を実行するほうが、実際に、調子を崩したとき、部下の不調に悩んでいるマネージャー、社内のハラスメント事案等の相談が、健康管理室の産業医や保健師に直接くる可能性が高まります。

このPDCAサイクルを回せるようになれば、メンタルヘルス予防の1次予防は実現した状態になったといっても過言ではありません。最終的に離職や休職を防ぐことにつながっていきます。実は、この手の相談件数が多い企業のほうが、全体的なメンタルヘルスによる不調割合が少ない傾向があります。

逆に、「形だけ」の健康管理室だと従業員も見抜いており、「相談しても、どうせ意味ない」と匙を投げられた状態だと、組織のメンタルヘルス耐性は低い傾向があります。

健康管理室が取り組む2つの大きなテーマ

健康管理室の二大テーマは、メンタルヘルス対応とフィジカルヘルス対応になります。
そして、メンタルヘルスは「休職者の対応」、フィジカルヘルスは「健康診断後の就業判定と事後措置」になります。

休職者の対応

従業員のメンタルヘルスによる休職、そして復職は、企業と従業員の利害関係が一致しない典型的な事案です。
産業医と産業保健師は、企業に寄り過ぎても、従業員に寄り過ぎても、後々に問題となるため、合理的な判断が極めて重要です。

厚生労働省が発行している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を参考に、従業員の復職に対し、合理的な判断ができる仕組みと、その運用を産業医が中心となって実現すると問題発生を最小化できます。

休職から復職までの一般的なフローは下記図の通りです。

休職者の対応

主治医、産業医、人事労務レベル、現場レベルにおける、それぞれの役割は下記の通りです。

休職した従業員が、一般社会に復帰できるレベル(主治医が判断)と、企業で専門的な職務を遂行できるレベル(産業医が判断)には差があるケースが少なくありません。

その企業で職務遂行できるか否かを客観的かつ合理的な理由に基づいて判断できる産業医が、この休職復職の仕組化と運用では求められています。

医学レベル産業衛生レベル人事労務レベル現場レベル
主治医・看護師産業医・保健師人事・社労士上長・現場
日常生活ができることが目標会社で安全に働けることが目標就業規則に則った行動ができることが目標きちんと利益が出ることが目標
診断書産業医意見書人事発令・懲戒命令・始末書

健康診断の就業判定と事後措置

健康診断をやっていない企業は限りなく少ないです。
これは、どのサイズの企業も行なっています。

2021年4月現在ですと、健康経営の取得や維持に健康診断受診率において事実上100%が条件になってきており、健康経営取得している企業は、やはり従業員に対する安全配慮義務の意識レベルが高い企業です。

しかし、そのような企業にも事実上、よくあるのが、健康診断後、保健指導が必要なレベルの従業員に対する対応です。

まず、そもそも健康診断のデータ管理を行っていないケース、そして、基礎疾患があるのに放置してしまってる従業員のフォローが行き届いていないケースは、まだまだ少なくありません。

新型コロナウイルスが世の中に提示したものは、基礎疾患を抱えている40代以降は重症化リスク、場合によっては死亡リスクも否定できないという事実です。これらのことから、2021年4月現在、基礎疾患を持つ従業員を把握し、安全配慮をどこまでやるべきか?保健指導を強化し、治療を促すという動きが大きくなりつつあります。

日本は産業保健が非常に進んでいる国の一つでありますので、今後、世界的に基礎疾患に対する対応について、個々人に任せることから、企業が対処すべき課題となっていくことも想定される、非常に重要な仕事となってきています。

健康管理室の運用課題

健康管理室に求められるものは、体制の安定性、経営陣、他部署、従業員からの信頼、コンプライアンス、そして産業保健に関する最新のスキルです。この要素を全て満たすために、産業保健のネットワークやノウハウがない一般企業が維持するのは至難の技です。さらに運用での課題は以下の6つがあげられます。

産業医の離職

健康管理室を置く大企業の場合、常勤の産業医を雇用するケースが一般的です。

臨床医の平均年収は1500万-1800万円です。
産業医も同等を求める場合が少なくないです。

しかし、企業からみると、この年収クラスは部長職以上のケースがほとんどです。
そこまで年収が上げられないという事情がありますし、どうしても高い人件費(給与+社会保険で、年間2000万円以上)に投資しづらいとう現実があり、比較的年収が抑えられ、雇用されています。

しかし、経験を積んでも、年収が上がらないため、産業医が新しい職場を求め、転職してしまうというループが、ずっと続いており、なかなか3年以上雇用することが難しいという実態があります。

産業保健師の離職

こちらも急激な環境変化に伴い、産業保健師のニーズが高まっていますが、看護師と比較すると、どうしても年収が抑えられがちです。

産業医と同様、新天地を求め、離職するケースが多々あります。

派遣というサービスもありますが、なかなか長くというわけにはいかない様々な事情があります。

業務内容のブラックボックス化

ストレスチェック 、健康診断のデータ化と事後措置、休職者の対応、メンタルヘルス予防等、休職に健康管理室に求められているミッションは大きくなってきている一方、変化が大きいため、業務内容がブラックボックス化しがちです。

他の部署からすると、何に忙しいのか?わからなくなるケースが少なくありません。

もともと医療職中心のチームであり、もちろん個々が産業保健のスペシャリストではあることは当然なのですが、ITやソフトウェアを駆使した業務スタイルに慣れていない、業務改善、生産性向上といった具体的な行動への落とし込みに慣れていない産業保健職も多いです。

今後、益々、重要性が増していく部門なことは間違いありませんので、健康管理室の要件定義をしっかり行い、業務プロセスの定期的な改善、ITやソフトウェアによる効率化を実行を主導する人材が、医療職以外に必要となります。

  • 医療職とそのほかの部門のハブとなる人材が必須
  • 支店や子会社まで統一された運用がなされていない
  • セルフケアやラインケア研修を産業医や保健師が行わない

まとめ

健康管理室の目的は、単純に「従業員の健康を守るため」だけではなく、「●●のため」という具体的な目的をもたせることで経営陣の意思決定の判断軸ともなりうる重要な組織と言えます。
一方で、健康管理室を運営するためには、体制の安定性、経営陣、他部署、従業員からの信頼、コンプライアンス、そして産業保健に関する最新のスキルが求められ、一般企業がこれらの要素を満たすことは大変難しいのが現状です。
さらに、産業医や産業保健師の離職、業務内容のブラックボックス化など運用における課題も持ち合わせています。

産業保健のネットワークやノウハウをもつ産業医紹介サービスなどの活用することで、これらの課題解消につながり、健康管理室を効果的に促進できるようになります。

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