メンタルヘルスケア問題は企業にとって悩ましい課題ではないでしょうか。そのため、健康経営の一環としてメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業もあると思います。
しかし、思ったような成果がでない場合や、メンタルヘルス対策の方法がわからない場合もあるでしょう。
本記事ではメンタルヘルス対策の基本的な知識から取り組む内容などをご紹介します。
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メンタルヘルス対策とは?
メンタルヘルスは精神面の健康や心の健康を意味します。また、メンタルヘルスの不調は以下のように定義されています。
精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。
(引用:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針(P14)」)
メンタルヘルス対策では上記のような不調に対して未然に防いだり早期発見に努めたりします。特に近年では、うつ病などの精神障害の認定件数や労災請求件数が増加傾向にあります。
参考:厚生労働省「精神障害に関する事業の労災補償状況」(P15)
この状況下で企業が労働者に対するメンタルヘルスケアの重要度が増しています。
メンタルヘルス対策の基本
メンタルヘルスの不調には対策の基本があります。下記で予防方法や企業が取り組むケア方法をご紹介します。
メンタルヘルスケアの基本「3つの予防」
まずはメンタルヘルスケアの基本として3つの予防方法をご紹介します。
- 一次予防:メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ
- 二次予防:メンタルヘルスの不調を早期に発見する
- 三次予防:メンタルヘルスの不調者の早期復帰支援の仕組みを整備する
メンタルヘルスの不調を未然に防止する
一次予防としてメンタルヘルスの不調を未然に防ぎます。これはメンタルヘルスの悪化を防ぐための予防です。
具体的には従業員のメンタルヘルスケア・ストレスマネジメントの研修、ストレスチェックなどを通じて職場環境の改善・従業員のメンタルヘルスケアに対して意識を高めます。
メンタルヘルスの不調を早期に発見する
二次予防として精神的な不調を抱える従業員の早期発見を目指します。早期発見と早期対応によって、医師の診断前の段階で状況を改善できる可能性があります。
詳しくは後述しますが、従業員が精神的な悩みなどを相談できる窓口の設置、産業医との面談機会の設定などが挙げられます。社内でリソースが確保できなければ、外部のメンタルヘルス専門サービスとの提携を考えます。
また、現場レベルでは上司や同僚が従業員の異変に気づいて、できるだけ早い段階でサポートすることが大切です。
メンタルヘルスの不調者の早期復帰支援の仕組みを整備する
三次予防としてヘルスケアの不調で休職した従業員の早期復帰を支援する仕組みづくりを行います。社内の産業医や衛生管理者、保健師などの専門家との面談や復帰支援プログラムの提供・実施など復職までの流れをフォローします。
この三次予防をないがしろにすると、従業員の離職につながります。従業員の復職へのフォローを社内でしっかりと整備しておきましょう。
なお、3つの予防に関しては下記のお役立ち情報を併せてご覧ください。
企業が取り組む「4つのケア」
厚生労働省は「4つのメンタルヘルスケアの推進」を定めています。下記で1つずつ解説していきます。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業所内の保健スタッフなどによるケア
- 事業所外の資源によるケア
セルフケア
セルフケアとは名前のとおり、従業員自らケアを行うことです。そのためには企業がセルフケア研修を開いて従業員に勉強をしてもらう必要があります。メンタルヘルスに関する知識が不足すると適切な対処ができないからです。
研修のほかにも教本(教材)を配布して自己学習ができる環境を整えることも有効です。そうして得た知識などをもとにストレスに気づき、対処ができます。なお、対象となる従業員だけではなく、管理職なども含めた働く社員全員を意味します。
ラインによるケア
ラインケアとは、職場の管理職(主に部長や課長)が日常的に行うメンタルヘルスケア対策です。具体的な内容は多岐にわたりますが、部下への接し方、ストレス軽減のための職場環境の改善です。
部下への接し方では、いつもと様子が異なる従業員に対して上司が関心を持つことが求められます。例えば、遅刻や早退、欠勤が増えたり業務の効率が悪くなったりすることが挙げられます。
いつもとは異なる様子の部下がいた場合は、上司としてしっかりと話を傾聴して適切な情報を提供する必要があります。必要に応じて企業内の産業保健スタッフへの相談や外部医師の受診を促すことが考えられます。
さらに、メンタルヘルスケアの不調で休職後に復職した従業員へは、積極的な職場復帰支援を行います。休職した従業員は職場復帰をする際に何かと周囲の目が気になるものです。
そのような従業員の気持ちを最大限に汲み取り、復職後の職場での緊張を和らげる必要があります。また、職場環境の改善のための組織づくりや改善計画の立案・実施・効果評価などへの取り組みも必要です。
事業所内の保健スタッフなどによるケア
事業所内の保健スタッフなどによるケアとは、産業医や産業保健師などの専門職からサポートを受けることです。従業員自らのセルフケア、上司によるラインケアの効果を得るには、産業医や産業保健師との連携が不可欠です。
例えば、産業医や産業保健師が職場巡回によって、異変を感じた従業員がいるのであれば管理職と共有します。そして産業医が職場の環境改善に必要なことをアドバイスして、統括的にケアを行います。
また、企業内の産業保健スタッフは社内のメンタルヘルス研修や勉強会を企画したり、従業員との面談結果をもとに課題解決への対策を実行したりします。
事業所外の資源によるケアとは、メンタルヘルスケアに関して専門的な相談が可能な機関に依頼したケアです。専門機関のほかにも、ネットワークを形成してケアを行う場合があります。外部機関と連携することで、効果的な施策の実施が可能です。なお、事業場外資源によるケアの一例では下記が挙げられます。
- 従業員支援プログラム
- 都道府県産業保健推進センター
- 労災病院や診療所
- 地域産業保健センター など
なお、4つのケアについては下記でお役立ち情報をまとめていますので、併せてご覧ください。
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企業が行う具体的なメンタルヘルス対策
企業が行う具体的なメンタルヘルス対策は主に3つあります。それぞれの内容を下記でご紹介します。
- ストレスチェック
- 相談窓口の設置
- 職場環境の把握・改善
- 職場環境の把握・改善
ストレスチェック
ストレスチェックとは、ストレスチェックテストを行うことです。労働安全衛生法が改正されて、労働者が50人以上の事業所は年に1回、ストレスチェックを全ての労働者に対して実施することが義務付けられました。
参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 導入マニュアル」(P2)
ストレスチェックは質問票を従業員に配って、質問内容に回答してもらいます。質問内容に指定はありませんが、何を使えばいいかわからない場合は国が推奨する質問票(57項目)を活用することができます。
参考:厚生労働省「ストレスチェック制度 導入マニュアル」(P6)
国が推奨する質問項目は、「ストレスの原因に関する質問項目」「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」が用意されています。
回答が終わった質問票は産業医や産業保健師、外部委託した専門家などの検査実施者が回収します。注意すべきは第三者や人事権を持つ従業員が回答内容を閲覧することです。
また、ストレスチェックテストが終了したら実施者がストレスの度合いを評価して高ストレス者として面談指導が必要な従業員を選定します。ストレスチェックの結果は企業側に帰ってきません。結果を入手するには、結果の通知後に従業員本人の同意が必要です。ストレスチェックテストの結果は、実施者が保存します。
相談窓口の設置
ストレスチェックに加えて従業員が利用できる相談窓口の設置も行いましょう。社内で相談しやすい環境が構築されると、高ストレス状態の従業員を放置することが少なくなります。
産業医や産業保健師が対応できるような窓口を設置と、看護師や精神保健福祉士、カウンセラーなどと連携できる体制づくりが求められます。相談窓口の設置は衛生委員会などで検討して、開設する流れが良いでしょう。相談窓口を設置したら従業員とその家族への周知を行い、運用を開始してください。
なお、衛生委員会では相談対応を行う人員体制、相談の申込み方法や相談対応の具体的な方法を決定します。細かに決定した内容を従業員とその家族に周知する流れです。
ただし、なかには社内の相談窓口を利用することに抵抗を持つ従業員がいることがあります。社外の相談窓口設置も併せて検討して従業員のストレスを軽減できるように取り組んでください。社外の相談窓口には、従業員支援プログラムなどの相談窓口サービスを提携している企業と契約する方法などがあります。
メンタルヘルス相談窓口の設置の流れと相談できる内容
職場環境の把握・改善
企業内では従業員が心身のストレスを抱えないように、職場環境の把握と改善が必要です。産業医や産業保健師が職場を巡回して専門家の観点から、職場の安全面や衛生面、社員の健康状態を把握します。
また、従業員とのコミュニケーションからストレスの度合いを察知するケースもあります。例えば、オフィス内が暑すぎて不快、お手洗いが少ないなど些細な不満であっても、多くの従業員が口に出すようであればストレスの要因と考えられます。
それから時間外労働についても見直す必要があります。1か月で80時間を超える時間外労働が過労死ラインともいわれていますが、80時間以下であっても労災認定となる場合があります。
現状の時間外労働のデータを収集して、過度に時間外労働が行われていないかを把握することが先決です。そして、時間外労働について減らしていくことも職場環境の改善になります。
なお、職場環境については下記でお役立ち資料をまとめてありますので、併せてごらんください。
https://www.avenir-executive.co.jp/sangyoui/materials/019/
企業がメンタルヘルス対策を行うメリット
企業がメンタルヘルスケア対策を行うメリットは主に4つあります。
従業員の心の健康を維持できる
従業員の心の健康を維持することで、自分自身のメンタルの不調に気づきやすくなります。特に社内でメンタルに関する研修や勉強会を実施することで、各従業員がメンタルヘルスの知識を身につけることができます。
そのため、自分自身のメンタルに不調が生じた際も適切に対処ができるわけです。セルフケアができるようになれば、ストレスを過度に抱えることが少なくなるでしょう。結果として、心身の健康を保って、長く働けるようになります。
企業の健康リスクマネジメントにつながる
適切なヘルスケア対策を行うことで、従業員の心身の不調を未然に防げます。従業員がうつ病やストレスが原因の心疾患や脳疾患などを患うと休職や退職の可能性があります。
従業員が休職もしくは退職することで、社内の人的なリソースが少なくなります。ひいては生産性が悪化して売上げや利益の確保が難しくなるでしょう。
また、従業員が休職や退職をすることで欠員補充をすることが考えられ、採用コストなどがかかります。企業にとってはできるだけ避けたいところでしょう。これらを未然に防ぐのがメンタルヘルスケア対策となるわけです。
生産性の向上につながる
従業員が心身ともに健康であれば、日々の業務をスムーズにこなすことができます。ご経験がある方がいるかと思いますが、身体が疲れていたり精神的に疲弊していたりすると、自分の能力を最大限に発揮できません。
特に製造現場や建設現場などのように機器を取り扱う業種であれば、少しのミスが大きな怪我や事故につながりかねません。それが原因で企業が社会的な信用を失うことが考えられます。
よって、できるだけ高いパフォーマンスを発揮するには、メンタルヘルスケア対策を行って精神面を充実させる必要があります。その結果、生産性が高まり企業に利益をもたらします。
企業活動において社会的責任が果たせる
企業活動を行ううえで利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある行動をとることが求められます。もちろん、企業活動に関して説明責任もあります。
企業にとってのステークホルダーは取引先など対外的な要素だけではありません。従業員も含まれます。そのため、従業員の健康を管理することは社会的責任となり、従業員のエンゲージメントの向上、さらに顧客や投資家から高い評価を受けることにつながります。
なお、企業活動において社会的責任を果たすためには、経営層からメンタルヘルス対策を推進することが必要です。
企業規模が大きくなると、メンタルヘルス対策を担当する部署と組織開発の部署が異なる場合がありますが、経営層からのコミットメントを得ることで部門間の連携がスムーズにいきます。
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メンタルヘルス対策は企業の産業医や産業保健師による面談が大切な要素です。専門知識を有する人物が従業員の健康管理を担うことで、より効果が得られるメンタルヘルス対策につながります。
高ストレス者は「なぜ面談が必要なのだろう」と感じる場合がありますが、産業医などから適切なアドバイスを受けることで、改善につなげられます。場合によっては専門機関の受診なども促せます。
このように産業医は企業と従業員を結ぶパイプ役となります。これを機会に産業医の配置を検討してみてはいかがでしょうか。
参考
https://www.persol-wd.co.jp/column/mental-health/
https://sangyoui-navi.jp/blog/249
https://kokoro.mhlw.go.jp/in-house/consultation/cs002/
https://hr-trend-lab.mynavi.jp/column/organizational-development/1842/#index_id5
https://www.armg.jp/journal/023-2/
https://it-trend.jp/mental_health/article/722-552#chapter-2
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